東北大学 金属材料研究所 量子ビーム金属物理学研究部門

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最近の論文から

Ce-substitution effects on the spin excitation spectra in Pr1.4La0.6CexCuO4+δ
S. Asano, K. Tsutsumi, K. Sato, and M. Fujita
Journal of Physics: Conference Series 807, 052009 (2017), DOI:10.1088/1742-6596/807/5/052009

電子ドープ型銅酸化物超伝導体では,単結晶育成の困難さから,超伝導と密接に関係すると考えられるスピンダイナミクスについて,あまり多くのことが知られていません.我々のグループでは,良質の単結晶を独自の手法で作成し,最近,広エネルギー帯域の磁気励起スペクトルの観測に成功しました.今回,得られたスペクトルの詳細な解析から形状と動的磁化率を評価したところ,高エネルギースペクトルほど電子濃度依存性が顕著であることがわかりました.

    

Successive Magnetic Transitions Relating to Itinerant Spins and Localized Cu Spins in La2−xSrxCu1−yFeyO4: Possible Existence of Stripe Correlations in the Overdoped Regime
K. M. Suzuki, T. Adachi, H. Sato, I. Watanabe, and Y. Koike
Journal of the Physical Society of Japan 85, 124705 (2016), DOI: 10.7566/JPSJ.85.124705

Feを部分置換した高温超伝導体La2−xSrxCu1−yFeyO4をミュオンスピン回転法によって調べたところオーバードープ領域で逐次磁気転移があることを明らかにしました.超伝導が発現するすべてのホール濃度領域で局在スピン相関に基づく磁性が現れるため超伝導と局在スピン相関の関係が示唆されます.

    

Spin Fluctuations from Hertz to Terahertz on a Triangular Lattice
Y. Nambu, J.S. Gardner, D.E. MacLaughlin, C. Stock, H. Endo, S. Jonas, T.J. Sato, S. Nakatsuji, and C. Broholm
Physical Review Letters 115, 127202 (2015), DOI: 10.1103/PhysRevLett.115.127202

南部雄亮准教授のグループは,中性子散乱を用いて三角格子反強磁性体の空間的,時間的磁気相関を明らかにすることに成功しました.磁気長距離秩序の存在しないNiGa2S4では磁気揺らぎがMHz程度で停留する温度領域が存在します.三軸分光器,後方散乱装置,スピンエコー分光器を用いた中性子散乱とミューオンスピン緩和,交流磁化率,非線形磁化率測定を組み合わせることで磁気揺動の時間スケールを定量的に解明しました.

    

Pressure-induced superconductivity in the iron-based ladder material BaFe2S3
H. Takahashi, A. Sugimoto, Y. Nambu, T. Yamauchi, Y. Hirata, T. Kawakami, M. Avdeev, K. Matsubayashi, F. Du, C. Kawashima, H. Soeda, S. Nakano, Y. Uwatoko, Y. Ueda, T.J. Sato, and K. Ohgushi
Nature Materials 14, 1008 (2015), DOI: 10.1038/nmat4351

日本大学高橋博樹教授,東北大学大串研也教授らの研究グループと共同で,約11万気圧以上の圧力下で梯子型構造を持つ鉄系化合物BaFe2S3が最高17 K で超伝導を示すことを発見しました.鉄系の梯子格子を持つ物質での超伝導は世界で最初の発見です.これまで超伝導発現機構の統一的な理解に至っていない鉄系超伝導体では,例外なく鉄の正方格子を基本構造としており,次元性の異なる結晶構造を有する超伝導体の発見が望まれていました.

    

Temperature and composition phase diagram in the iron-based ladder compounds Ba1−xCsxFe2Se3
T. Hawai, Y. Nambu, K. Ohgushi, F. Du, Y. Hirata, M. Avdeev, Y. Uwatoko, Y. Sekine, H. Fukazawa, J. Ma, S. Chi, Y. Ueda, H. Yoshizawa, and T.J. Sato
Physical Review B 91, 184416 (2015), DOI: 10.1103/PhysRevB.91.184416

鉄系超伝導体では磁気秩序を示す母物質に対して化学置換や圧力印加をすることで超伝導状態が安定化することが知られています.我々は鉄系超伝導の一次元類似化合物を研究しており,ともに磁気秩序を示す母物質であるBaFe2Se3とCsFe2Se3の希釈系で磁性が完全に抑えられる濃度領域が存在することを発見しました.

    

Dynamical Structure Factor of Magnetic Excitation in Underdoped La1.90Sr0.10CuO4
Measured by Chopper Neutron Spectrometer
K. Sato, M. Matsuura, M. Enoki, K. Yamada, and M. Fujita
Key Engineering Material 616, 291-296 (2014), DOI: 10.4028/www.scientific.net/KEM.616.291

中性子磁気非弾性散乱強度の絶対値解析は,磁性体の磁気モーメントの評価を通して磁気相関の起源について貴重な情報を与える.とりわけ電子の局在性と遍歴性の狭間で生じる特異な磁性の理解には,必要不可欠な解析である.本論文では,磁気散乱強度の絶対値を導出する二つの方法を考察し,J-PARCの実験で得られているホールドープした銅酸化物高温超伝導体La1.90Sr0.10CuO4の散乱強度をそれぞれの手法で評価した.

     

Effects of Oxygen Reduction and Ce-Doping on Magnetic Order
in T’-Pr1.40-xLa0.60CexCuO4+δ−α Studied by μSR Measurement

K. Tsutsumi, M. Fujita, K. Sato, M. Miyazaki, R. Kadono, K. Yamada
Key Engineering Material. 616, 297-301 (2014), DOI: 10.4028/www.scientific.net/KEM.616.297

T’構造電子ドープ系銅酸化物における超伝導は,反強磁性磁気秩序を示す絶縁体に元素置換し,さらに還元熱処理を施すことで発現する.本研究では,局所プローブであるミュオン回転測定法を用いて,T’構造Pr1.40-xLa0.60CexCuO4+δの磁性に対する元素置換効果および還元熱処理効果を調べた調べた.どちらの効果によっても磁気秩序は不安定化するが,ミュオンの回転成分や周波数に違いがあり不安定化のメカニズムが違うことを示唆する結果を得ることができた.

       

Temperature Dependence of Spin Fluctuations in Underdoped La1.90Sr0.10CuO4
K. Sato, M. Matsuura, M. Fujita, R. Kajimoto, S. Ji, K. Ikeuchi, M. Nakamura, Y. Inamura, M. Arai, M. Enoki, and K. Yamada
Proc. Int. Conf. Strongly Correlated Electron Systems (SCES2013),
JPS Conf. Proc. 3, 017010 (2014), DOI: http://dx.doi.org/10.7566/JPSCP.3.017010

銅酸化物高温超伝導体La1.90Sr0.10CuO4のスピン揺らぎを広い温度領域で測定した.100meV以上のスペクトルには温度変化はほとんどなく,低エネルギー領域では大きな変化が見られた.しかし,低エネルギー励起の格子非整合構造は室温付近まで見られ,この非整合構造を形作る特徴的なエネルギースケールが非常に高いことがわかった.磁気励起の起源を考える上で電荷の相関を考える必要があることを示唆している.

  

Magnetic Excitation in Lightly-Doped Bi2.4Sr1.6CuO6+y
K. Tsutsumi, M. Fujita, M. Enoki, K. Sato, D. Adroja, and K. Yamada
Proc. Int. Conf. Strongly Correlated Electron Systems (SCES2013),
JPS Conf. Proc. 3, 012007 (2014), DOI: http://dx.doi.org/10.7566/JPSCP.3.012007

Bi2-xSr2+xCuO6+yの希釈ホールドープ試料に対して,世界で初めてパルス中性子を用いた非弾性散乱実験を行った.x=0.4の試料では,数meVまでの磁気励起シグナルが(HK0)面内で異方的であることがEnokiらにより示されていたが,10meV≦E≦30meVでは等方的であることが本実験で新たにわかった.シグナルが等方的に移り変わるエネルギーはLa2-xSrxCuO4(LSCO)の同ホール濃度試料よりも低く,またLSCOで観測される“砂時計型”励起が本試料では確認できなかった.これらの原因として,化学的なディスオーダーによる1次元相関の抑制の可能性が考えられる.

  

High-Energy Spin and Charge Excitations in Electron-Doped Copper Oxide Superconductors
K. Ishii, M. Fujita, T. Sasaki, M. Minola, G. Dellea, C. Mazzoli, K. Kummer, G. Ghiringhelli, L. Braicovich, T. Tohyama, K. Tsutsumi, K. Sato, R. Kajimoto, K. Ikeuchi, K. Yamada, M. Yoshida, M. Kurooka, and J. Mizuki,
Nature Communications. 5, 4714 (2014), DOI: 10.1038/ncomms4714

Nd2-xCexCuO4とPr1.40-xLa0.60CexCuO4の単結晶に対して軟X線,中性子線,硬X線の量子ビームを用いた非弾性散乱実験を行い,絶縁体に電子をドープすることで生じる電子(スピンと電荷)の動きの変化を明らかにした.ホールドープ型超伝導体とは励起状態の様子が大きく異なり,注入された電子がより動きやすい状態にあることがわかった.
(旧研究室に在籍した佐々木君が,結晶作りから中性子散乱およびX線散乱実験,データ解析まで行いました.)
プレス発表を行いました.
   
Temperature Dependence of Spin Excitations in the Frustrated Spin Chain System CuGeO3
M. Fujita, C. D. Frost, S. M. Bennington, R. Kajimoto, M. Nakamura, Y. Inamura, F. Mizuno, K. Ikeuchi, and M. Arai,
J. Phys. Soc. Jpn. 82, 084708 (2013), DOI: http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.82.084708

スピンパイエルス物質CuGeO3における,連続励起領域を含む全磁気励起スペクトルの温度依存性を明らかにした.動的構造因子の温度変化から,この系の磁性に対する一次元鎖内相互作用のフラストレーション効果の重要性を論じた.

         

Dual Structure of Low-Energy Spin Fluctuations in La1.80Sr0.14Ce0.06CuO4
M. Enoki, M. Fujita, and, K. Yamada,
J. Phys. Soc. Jpn. 82, 114707 (2013), DOI: http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.82.114707

LSCOにおける斜方晶歪みとホール濃度の関係をCe置換することで変化させ,実効的に歪みを小さくした系での磁気励起を調べた.その結果,局所磁化率のエネルギー依存性にpeak-dip-hump構造を見出した.詳細な解析から,磁気秩序に由来する低エネルギー励起と超伝導に関係する比較的高いエネルギーの二種類の励起が存在する可能性を示した.
 
      

Spin-Stripe Density Varies Linearly With the Hole Content in Single-Layer Bi2+xSr2-xCuO6+y Cuprate Superconductors
M. Enoki, M. Fujita, T. Nishizaki, S. Iikubo, D. K. Singh, S. Chang, J. M. Tranquada, and K. Yamada,
Phys. Rev. Lett. 110, 017004 (2013), DOI: 10.1103/PhysRevLett.110.017004

単層構造Bi2+xSr2-xCuO6+yの大型単結晶を作成し,この系に対する初めての低エネルギー磁気非弾性中性子散乱実験を行った.スピン密度の空間変調の間隔と方向がホールドーピングにより変化する様子を詳しく捉え,同じく単層構造であるLa2-xSrxCuO4との比較から磁気相関の普遍性を議論した.(旧研究室で博士課程を修了した榎木さんの研究成果)

      

結晶育成

高品質大型単結晶育成
Bi2201.flv
組成傾斜フローティングゾーン育成法で,1ccを超えるBi2+xSr2-xCuO6+d大型結晶を作っている様子.
作成した結晶は,国内外の多数のグループで研究に使われています.