東北大学 金属材料研究所 量子ビーム金属物理学研究部門

東北大学 金属材料研究所 量子ビーム金属物理学研究部門
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研究概要

研究内容と対象

中性子非弾性散乱により観測された二次元銅酸化物の磁気励起スペクトル.スピンダイナミクスを評価し,スピン間の相互作用,物性の発現機構を解明します.

 強相関電子系では,電子の持つ複数の自由度(電荷・スピン・軌道など)が絡み合って,思いも寄らない新機能,新物性を発現することがあります.その背後には,自由度の異なるエネルギースケールに起因した階層的ダイナミクスが存在します.そのため機構解明には骨格となる物質の基本構造の決定だけでなく,スピンや電荷などの複合ダイナミクスを調べ,相互作用に関する知見を得ることが重要になります.例えば,高い超伝導転移温度を示す銅酸化物では磁気秩序相の近くに超伝導相が存在し,超伝導の実現には電荷相関と結びついたスピン間の動的相関が深く関わっていることがわかっています.私たちの研究室では,強相関電子系の多彩な現象の背後にある相関関係を解き明かし,新しい物理の創成を目指しています.

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科研費基盤研究(A) (H28.4 - R3.3)
 「中性子スピンプリズム法の確立と超伝導体の電子多自由度マルチダイナミクスの研究(代表者 藤田)
科研費基盤研究(C) (H31.4 - R3.3)
 「高圧力下中性子回折実験による超伝導と競合する重い電子反強磁性状態の研究(代表者 池田)
新学術領域「複合アニオン化合物の創製と新機能」(公募研究) (H31.4 - R3.3)
 「中性子を用いた複合アニオン化合物の構造同定と物性解明(代表者 南部)
新学術領域「ハイエントロピー合金」(公募研究) (H31.4 - R3.3)
 「中性子回折によるハイエントロピー合金の局所構造解析(代表者 池田)
日本学術振興会特別研究員(DC2) (H31.4 - R3.3)
 「銅酸化物超伝導体の酸素制御に基づく局所構造変化が誘起する創発磁気現象の解明(申請者 浅野)
  を実施しています.

終了した研究課題
科研費基盤研究(B) (H28.4 - H31.3)
 「新しい偏極中性子散乱手法を用いた高次スピン及び軌道自由度の検出(代表者 南部)
新学術領域「複合アニオン化合物の創製と新機能」(公募研究) (H29.4 - H31.3)
 「中性子散乱を用いた複合アニオン化合物の構造解析(代表者 南部)
科研費若手研究(B) (H28.4 - H30.3)
 「中性子散乱による重い電子系セリウム化合物における磁性と超伝導の共存競合問題の研究
 (代表者 池田)

科研費若手研究(B) (H27.4 - H30.3)
 「不純物置換効果を利用した電子ドープ型銅酸化物超伝導における磁気相関の起源の研究
 (代表者 鈴木)

日本学術振興会特別研究員(DC2) (H26.4 - H28.3)
 「銅酸化物における電子共存状態の解明 ー局在・遍歴電子スピン、磁性・超伝導の共存ー
 (申請者 佐藤)

新規研究対象の単結晶作成

単結晶作成の様子と中性子散乱実験に用いる単結晶群.

 測定を行うためには良質の試料が欠かせません.このために単結晶の作成を独自に行う環境を整えています.どこにも存在しない結晶を作ることは,科学の発展につながる新発見の原動力となります.私たちの研究室では,従来育成が困難とされていた物質や,研究の付加価値の高い物質の結晶化を,独自のアイデアを活かして行っています.これにより世界で初めて行われる実験を先導しています.また,実験結果を次に必要な試料の作成にフィードバックできるため,柔軟で自由度の高い研究の推進が可能です.

 Bi系銅酸化物超伝導体の結晶育成の様子
 組成傾斜フローティングゾーン法で,Bi2+xSr2-xCuO6+dの高品質単結晶を作っています.1ccを超える単結晶を作成できるグループは世界にもほとんどなく,そのため,作成した結晶は,国内外のグループで研究に使われます.

量子ビームの複合利用

銅酸化物高温超伝導の舞台となるCuO2面.この面のスピンと電荷の情報を中性子やX線を利用して取り出します.

 私たちの研究室では,構造とダイナミクスの研究ツールとして中性子散乱法を活用しています.中性子散乱は広い空間・時間スケールでの測定が可能で,物質内に存在するスピンの情報を得る上で威力を発揮します.また,電子の複数自由度が絡み合った新規な相互作用の決定と物性発現の原因の解明には,それぞれの自由度を調べるのに適した,特性の異なる人工放射線(量子ビーム)を相補利用した研究が重要との立場から,マルチプローブ実験を主導的に行っています.中性子実験を基軸にミュオンや放射光X線などの量子ビームを幅広く利用することが本研究室の特徴のひとつで,研究対象を多角的に捉えて本質に迫っていきます.これら量子ビーム実験には国内外の多数の大型施設を利用しており,国内ではJ-PARCSPring-8PFなどの先端量子ビーム施設で行っています.

KEK構造物性研究センターのプロジェクト (H27.10 - H33)
 「強相関電子系における局所構造誘起バルク現象の研究(プロジェクトリーダー 藤田)」に参画しています.

マルチプローブ共同利用実験課題 (H27.10 - H30.9)に採択されて実施した課題
 「T’構造銅酸化物における局所構造変化が誘起する量子相転移(実験責任者 藤田)
 「マルチプローブで視る鉄系梯子型物質の磁性と超伝導(実験責任者 南部)

物質構造科学研究所量子ビーム研究支援事業に採択されて実施した課題
 「
CuO5ピラミッド構造を持つT*構造銅酸化物超伝導体の基底状態とスピン相関(代表者 浅野)
 (H29.10 - H30.3)
 「
複合的な量子ビーム利用によるT’構造銅酸化物超伝導体における局所構造の研究(代表者 鈴木)
 (H27.10 - H28.3)

中性子科学発展への取り組み

J-PARCに建設中の偏極中性子非弾性散乱装置(左),および,JRR-3に設置されている粉末回折装置(右上)と非弾性散乱装置(右下).

 私たちは,中性子散乱の専門グループとして,中性子技術の開発と新しい技術を駆使した研究を進めています.例えば,スピン偏極デバイスの開発や非弾性散乱強度の絶対値導出のルーチン化などを行い,国内外の研究者との連携を通じて実用化につなげています.また,金研が東海村の研究用原子炉施設JRR-3に管理する中性子装置群では,結晶構造・磁気構造と格子振動・磁気揺らぎの研究を包括的に行える環境を整えており,その高度利用化にも取り組んでいます.さらには,高エネルギー加速器研究機構と東北大学が連携して進めている,J-PARCでの偏極中性子非弾性散乱装置の建設と運営にも主体的に参画しています.定常中性子源と核破砕パルス中性子源の両方に装置を持つ大学は世界を見渡しても大変まれで,他にはない独自の横断利用で中性子科学の発展に貢献していきます.

JRR-3には我々グループが管理する三台の中性子散乱実験装置があります.
 三軸型中性子分光器(T1-2 AKANE)(装置責任者 藤田)
 中性子粉末回折装置(T1-3 HERMES)(装置責任者 南部)
 三軸型中性子分光器(6G TOPAN)(装置責任者 富安(理学研究科))

KEK物質構造科学研究所の中性子共同利用S1型実験課題
 「偏極中性子散乱装置POLANOによる静的・動的スピン構造物性の研究(代表者 横尾)
  を実施しています.

研究部共同利用

 下記の先生方と,2019年度の金研研究部,中性子物質材料研究センターおよび附属新素材共同研究開発センターの共同利用を通じた共同研究をさせて頂いております.その他にも多くの方々と共同研究を進めています.

2019年度の実施課題
 ご氏名(敬称略)    研究課題名
足立 匡 (上智大)  T’型電子ドープ系銅酸化物高温超伝導体における還元処理と電子状態に関する研究
飯沼 昌隆(広島大)  La核高偏極実現のためのペロブスカイト系La標的結晶の基礎研究
池内 和彦(総科機構) 電子添加型銅酸化物高温超伝導体における格子振動/スピン励起と電子系の結合
石井 賢司(量研機構) 銅酸化物超伝導体Pr1.4-xLa0.6CexCuO4における2キャリア状態の検証
久保木 一浩(神戸大) 銅酸化物高温超伝導体の表面状態の理論的研究
小林 理気(琉球大学) 中性子非弾性散乱実験用大型単結晶試料の育成
宮崎 正範(室蘭工大) 層状ペロブスカイト型Co酸化物における頂点酸素スピンによる電気磁気効果の研究
Hajime Yamamoto(Tohoku Univ. )
  Oxygen reduction effect on the crystal structure in the T’-structure of Pr2CuO4+y studied
  by neutron diffraction
Takashi Honda(High Energy Accelerator Research Organization)
  Fabrication of high-resolution radial collimator with 3D printer
Yoichi Ikeda(IMR, Tohoku Univ.)
  Practical training of an advanced neutron-scattering experiment with the FLEXX spectrometer
   at BER II
Takanori Taniguchi(Kyoto Univ.)
  Neutron diffraction study on structural and magnetic properties of the tetragonal Mn3+xGe1-x
Daisuke Okuyama(IMRAM, Tohoku Univ.)
  Phase diagram of the moving magnetic skyrmion lattice with plastic deformation in MnSi
  under high electric current

-中性子物質材料研究センター分-
池内 和彦(総科機構) スピンパイエルス系CuGeO3にみられるガンマ点近傍励起の起源の解明
猪野 隆(高エネ機構) 3He中性子スピンフィルター用ガラスセルの開発
岡 研吾(中央大学)  Pb/Bi酸フッ化物の中性子回折による結晶・磁気構造解析
岡田 宏成(東北学院大)高磁気異方性を有する正方晶Mn化合物の磁気構造解析
陰山 洋(京都大)   反強磁性トポロジカル絶縁体の磁気構造解析
鳴海 康雄(大阪大)  幾何学的フラストレーション磁性体における多重q秩序状態の研究
益田 隆嗣(東京大)  酸素吸着CPL1における偏極中性子散乱研究
松本 裕司(富山大)  Tm6Tr4Al43の磁気構造(Tr=Mo, Ta, W)
宮崎 正範(室蘭工大) スピン密度分布測定によるLa2CuO4の頂点酸素磁性スピンの研究
森 道康(原子力機構) 希土類ガーネットにおける磁気弾性交差相関
山瀬 博之(物材機構) 銅酸化物高温超伝導体におけるスピン揺らぎによる電荷相関
山田 高広(東北大)  低熱伝導性を示すNaを内包したトンネル構造を有するジントル化合物のダイナミクス
Christopher Stock(Univ. of Edinburgh, UK)
  Coupling structural and magnetic orders through orbital degeneracy– the case of Fe2TiO4
Maxim Avdeev(ANSTO, Australia)
  Tohoku U/ANSTO collaboration on theoretical and neutron scattering studies of magnetic materials
Patrick Hautle(Paul Scherrer Institute, Swiss)
  Studies on the development of large size perovskite-based lanthanum crystals for a polarized
  lanthanum target

Nilsen Goran(ISIS Neutron & Muon Facility, UK)
  Collaborative development of polarized neutron techniques for time-of-flight spectrometers
矢野 真一郎(National Synchrotron Radiation Research Center, Taiwan)
  Proposal on complementary uses of cold triple axis spectrometer SIKA and Polarized neutron
  spectrometer POLANO.

Evgenii Vladimirovich Altynbaev(Neutron Research Department, Russian Federation)
  Study of the spin-wave dynamics using TAIKAN at J-PARC through Russia-Japan collaboration