梅本君の海外研究室滞在記
渡航先: バージニア大学/University of Virginia渡航期間: 2022年10月30日―2023年2月4日
用務: 短期留学
現地指導教員: Prof. Despina Louca (Department Chair)
研究:本滞在は,バージニア大学のDespina Louca教授の下で中性子を用いた局所構造解析の手法と解析を学ぶことが主目的でした.本滞在にあたり,東北大学挑戦的研究プログラム・東北大学金属材料研究所研究教育助成基金事業「はばたき」・東北大学金属材料研究所若手海外派遣から支援を頂きました.滞在中にオークリッジ国立研究所にて,中性子全散乱実験を行いました.実験の前後はデータの解析と議論です. 1週間に1度,一人あたりの持ち時間が無制限のミーティングがあります.時によりけりですが,僕が一人で1時間以上使ったこともあり,集中して濃い時間を過ごすことができて貴重な経験でした.
生活:1ドルが152円の大台を記録してすぐ,3カ月の滞在が始まりました.どこまで円安(と米国内のインフレ)が進むか全く見当がつかない状況で,二つのルールを決めました.1つは知力と体力の限りを駆使してお金を使わずに楽しむこと,もう1つは誰かに誘われた場合はそれが自分の趣味に合わないことでも参加して,その時は躊躇なくお金を使うということです.以下ではこの二つの題目それぞれの活動とその感想を述べます.
ルール1:シャーロッツビルはその気になれば一日でその外周を周りきることができるほどの街です.食べるのも飲むのもお金がかかりますが,歩くのはタダです.週末天気が良ければ水筒にお茶を入れて,リンゴとパンをもって散歩に出かけました.リバンナトレイルやモンティチェロトレイルは当然制覇しました.キリスト教圏のため街中に教会があります.ある教会に「welcomes you」という看板が出ていて,welcomeに三単のsがついているのを初めて見ました.街中を無心に,あるいはよしなしごとを考えながらひたすら歩きました.住居は大学の国際センターで,各国から来る訪問者とキッチンや風呂などの設備を共用します.国際センターで行われる無料のイベントには全て参加しました.サッカーワールドカップの決勝を見るイベントにもいきましたが,その熱狂具合は全く理解できませんでした.でも無料の軽食はおいしかったです. 3カ月の滞在を通して,一人で外食したのは1回だけです.食べたものの味は2日もすれば忘れてしまうため,それほど重要ではないと考えたからです.Chick-fil-Aというファストフードのハンバーガーを食べましたが,値段がファストフードではなくて気が気でなかったことだけは覚えています.日本出国前に毎日飲むお茶やスープの素・和えるだけのパスタソースを大量に買い込み,計画的に消費しました.平日の昼食はパスタかパンかの2択で,朝作って登校し,天気が良ければそれを外で食べました.昼食後もデータ解析など作業を進め,飽きてきたら休憩がてら大学内や大学周辺を散歩しました.今年の冬は比較的暖かくて気持ちのいい日が多くてよかったです.空気が乾燥していて日差しが柔らかく,学内の乾いた芝生でする昼寝は極楽の気分でした.この生活の中でのちょっとした贅沢はビールでした.スーパーで12 oz缶(日本の350 ml缶相当)を6本詰め合わせて12ドルくらいで買います.毎回違う地ビールを自分で選ぶことができます.安くはないですが,外で飲むのと比べると1/4の値段です.自炊の常連なので,同じく自炊をしにくるほかの学生や寮監の方と仲良くなりました.寮監さんは,たまに彼が買ってきた16 oz缶(日本の500 ml缶相当)の地ビールと僕の12 oz缶を交換してくれました.実のところ各ビール(合計33種類)の味を正確に覚えているわけではありません.しかし,毎回違うビールを選ぶ楽しさ,頭がぼーっとしながら他人と話したりしているときの高揚感は覚えています.また,ビールは総じてどれもおいしかったです.あとはAmtrakの乗車券が一番安い日を吟味して,ワシントンD.Cに日帰り旅行をし,美術館に行きました.食料は携行し,美術館の入場料はタダです.見たかった絵を見ることができました.それほど有名な絵ではないので,多数の中の一枚という感じの展示であり,展示ケースのアクリル板に館内のライトが反射してよく見えなかったことは残念です.しかし,ネット検索では分からない筆遣いや色遣いを感じることができて良かったです.
ルール2:寮監さんとその友人がクリスマスの後にイルミネーションを見に行こうと誘ってくれたので,イルミネーションには全く興味が無かったけれど行きました.やはり興味は持てず特に感動もせずひたすら寒く,結果として入場料はひどく高く感じました.日本にいたら絶対しないことなのでその意味では良い経験です.そのほかには,以前国際センターに短期滞在し,現在バージニア大学の物理学科でポスドクをやっているフランス人3人とビールを飲みに行ったり,EscapeRoomというゲームをしたりしました.ゲーム自体は可もなく不可もなくでしたが,互いの国の文化や冗談を言い合えたことは面白かったです.
総括
所属研究室とは異なるスタイルの研究室で活動できたことは,自分の活動を決めていくうえで重要な体験でした.今回の滞在は,円安とインフレで金銭的には厳しいものでした.この滞在記では自分が楽しくなかったこと・やってみてもその良さが理解できなかったこともあえてよかったことの記憶と同列に記しました.これらの結果,自分の価値観を新たにしました.例えば,日本食は好きですが,無ければ無いで全く構わず特に食べたいとも思いませんでした.言葉が通じなくて困ることや会話が無くて寂しく思うこともありませんでした.異邦人として,人種的にも文化的にも少数者として暮らすことは結構性に合っていると感じました.次は英語が第一言語ではない国に行くのもいいなと思っています.